ボランタリーなシステム開発協力者を募集中です
当コンソシアム・デベロッパーズ部会では、アドホックモールや今後企画予定アプリケーションのボランティアSE(APL開発者)を募集しております。以下概要・開発の背景・P2Pの特徴をお読みになり、ご賛同いただける方はp2p@kiryu.jpまでメイルにてご連絡下さい。活動の主旨目的にご賛同いただければSIONetの開発環境を提供可能です。

 日本電信電話株式会社(NTT)は、サーバを経由しない新しい通信として期待されているピアツーピア(P2P/Peer to Peer、欄外参照)の新技術「SIONet」を「未来ねっと研究所」において開発しました。P2Pは、インターネットの新しい利用法として現在注目を集めている最新技術です。
 P2Pの利用例としては、ネプスター(Napster)やグヌーテラ(Gnutella)、ウィンMX(WinMX)などのいわゆる「ファイル交換ソフト」を思い出される方も少なくありません。しかし、これらの利用方法は、そのどれもが「データ交換」だけを目的としたP2Pの一利用例に過ぎないばかりか、最近では、音楽ファイルや映画などのデータをやり取りする利用が中心のため、それにまつわる著作権が社会問題にまで発展していることは周知の事実です。
 しかし、今回の実験で使うNTTが開発した「SIONet」は、これらの「ファイル交換ソフト」とは大きく異なり、P2Pが持つ本来の魅力を最大限に利活用できるサービスです。以下に、「SIONet」で可能なサービスの実用例を上げてみましょう。
1) 参加者自身が中心となり、各個人間でさまざまな情報を自由に送受信する。
 → 例えば、個人的に撮影した写真を友人のパソコンへ、インターネット経由で直接送ったり、また逆に自分のパソコンへのアクセス許可を出せば、相手は自分のパソコンの中から選んだ写真を取り出すことが可能になる。
2) 企業や団体が、離れた地域/場所で共同作業をする。
 → 情報、データの共有が必要となるため、大きなサーバが必要になり、そのバックアップを定期的に取る「ブローカ(管理者)」も必要となる。その場合、管理者側の資金などの負担が大きなってしまう。さらに、現在のような仕組みでは、もしサーバが何らかの理由で動かなくなった場合には、様々なところへ支障が出るばかりか、極端な例を上げれば、企業が使用するサーバを直接狙った企業テロなどの危険もはらんでいる。そこで、大量のデータをいくつものコンピュータに分散させて、それぞれのコンピュータで管理することでその負担や危険を回避することができる。
 これらの試みはそのどれもが、P2Pの持つ特徴を存分にふまえている利用方法です。そして、インターネットのような「誰でも見られる」バーチャルの空間ではなく、セキュリティ対策をしっかりと施しているために信頼性が高く、また利用者がどんどん増えてゆくことにも対応したネットワーク構築を可能にしているのです。「SIONet」は参加者自身が「自ら生み育てる」ネットワークコミュニティを作れる画期的なツールなのです。

 ではなぜ、そのような方法のネットワークを作る必要があったのでしょうか。ここでは、SIONetが開発された背景について簡単に説明いたします。
 インターネットで広く使われているWebやメールは、サーバ・クライアントと呼ばれる通信方式を使っています。各個人が持つコンピュータからの情報やメールを送るなどの要求事項を、サーバが受信し、処理した結果を返信する仕組みとなっています。この方式は大学・研究機関等、狭い範囲で閉じたネットワークを作るのには適していますが、世界中に散らばる数多くのコンピュータが接続される現在のインターネットの世界では、サーバへの負担集中という問題を引き起こします。 
 具体的には、インターネットに接続しようとすると、なかなか繋がらなかったり、メールの受信に時間がかかるなどの症状が見られますが、これはサーバへの負担が原因となるものです。その負担がさらに大きくなれば、サーバがダウンし、インターネットに接続できないという事態にもなりかねません。コンピュータでネットワークを組んで仕事をしていることが多い現代では、そのようなことがあっては困ります。そこで、考えられたのが、「SIONet」なのです。
 メールを例にとって考えてみましょう。
【サーバクライアントの場合】
  例えば、Aさんが同じ市内に住むBさんへメールを送ったとしましょう。サーバが東京にある場合、Aさんが送ったメールは、Aさんが契約している東京のサーバへ送られ、そこから発信作業をして、Bさんのサーバへ送られ、さらにBさんがパソコンを立ち上げて、「受信」ボタンを押すと自分のパソコンへとメールが送られてきます。
 つまり、AさんとBさんのパソコンに問題がなくても、Aさんのサーバ、Bさんのサーバのどちらかが何らかの理由で動かなくなってしまうとメールのやり取りができなくなってしまうのです。 
 そこで、同じようにP2Pの場合でそれを考えてみましょう。 
【P2Pの場合】
  P2P技術の特徴を表す「ブローカレス」という言葉があります。ブローカ(サーバ)を経由することなく、各コンピュータ同士がダイレクトに繋がる様を「ブローカレス」と表現しています。
 つまり、P2Pの技術を使ったSIONetの場合は、メールを送る場合は、Aさんのパソコンから発信されたメールは、インターネットに繋がっているいくつかのパソコンを経由して、直接Bさんのパソコンへと送ることが可能になるのです。特徴としては、その都度適当な転送経路を探しながら送るため、サーバを必要とせず、安定してメールの送受信が可能になります。
 負担が集中するサーバを持たないため、コンピュータに限らず、身の回りのあらゆる機器がつながり、更に大規模になってゆくと予想される次世代インターネットに最適な技術といえます。特定の研究者によるファイル転送等への利用が中心であった「パソコン通信」と呼ばれていたインターネットを第一世代、webなどに代表される現在のインターネット利用の中心を第二世代だとすると、P2Pは第三世代のインターネット利用を切り拓く新しい技術と言っても過言ではありません。

1) 多目的な利用ができる
   前述したネプスター(Napster)、グヌーテラ(Gnutella)等のP2Pシステムは、利用者に見えるサービス(音楽交換、ファイル交換など)を可能にする“アプリケーション”部分と、検索をしたり、検索結果を知らせる“プロトコル”部分が一体となって作られています。そして、アプリケ−ションを動かすプロトコル部分は各システムごとに独自に作られているため、アプリケーション部分での互換性や相互の運用などは行えません。
 そこで、SIONetでは,アプリケーション部分とプロトコル部分を明確に分けて設計し、SIONetのプロトコルをいくつものアプリケーションで使えるような仕組みとしたのです。
2) 安心・安全に利用可能
  SIONetでは、「意味情報」と呼ばれるキーワードに基づいて、情報の転送作業を行います。意味情報とは、転送する情報の内容や概要を表したもので、SIONetではその「意味情報」を見ながら情報の転送先や転送経路を決めます。
 そのような特徴を利用することで、同じキーワードを共通項として持った「イベントプレイス」と呼ばれるネットワークコミュニティを作れ、情報の送り先をそのイベントプレイス内に限定することが可能です。それにより、個人的な情報を守りつつ、限られたコミュニティの中だけで情報交換を可能にしています。イベントプレイス間での情報の転送は、意味情報をチェックすることによって、不正な情報や不必要な情報の受け渡しを防ぐことができます。つまり、必要な欲しい情報だけを受け取ることができるのです。
3) 規模の拡大に対応
  SIONetでは、情報転送に関わるネットワークに接続されているコンピュータやルータなどの「ノード」を、地理的に散らばせて配置することができるので、SIONetの利用者が使うネットワークの回線利用量が増加しても、ストレスを感じること無く快適にサービスを利用することが可能です。また、あるノードが障害になっても、他のノードがそれを代行することができるので、システム全体の信頼性を高めています。
 これまでは、利用者の資料時間帯が集中すると、データの転送速度が遅くなり、メールやデータベースの利用などあらゆる場面で支障がでることがありました。また、多くのサーバは一度に送れる情報量に制限があるため、サイズの大きいメールなどは送受信できないなどの問題がありましたが、SIOnetを使うことで、そのような問題もクリアできるのです。

それでは以下、この「SIOnet」によって行う実証実験について簡単に説明いたします。
(1)アドホックモールプロジェクト
 桐生在住の作家自身が中心になり、誰もが自由に出店、買い物ができるインターネットバーチャルモールを構築します。バーチャルでありながら、フリーマーケットで買い物をするようなアプリケーションです。
ヤフーや楽天市場のように、ブローカがあらかじめ用意した「テナント」状のモールに出店するのとは異なり、マーケットそのものを参加者である作家自らが生み出し、育て、別のイベントプレイスを設置したりすることが可能です。
 管理者が不在であるため、参加者は自らの情報だけを管理すれば良いのです。これによって、今まで必要とされてきたサーバやネットワーク管理者などを必要とせずにモールの運営が可能となるのです。
2)ワイン日記
本来日記というものは個人個人が書くものですが、このワイン日記は、参加者が書いた日記をまるで一冊の本でも読むように閲覧できるアプリケーションです。
 また、閲覧者は、意味情報(キーワード)を選択することで、検索条件に合致したワイン情報だけを取り出して閲覧することや例えば「20代女性が好む」と検索することで専門家はマーケティングにも利用することも可能です。
 この際、各個人が自身のパソコンに登録したプロフィール情報を元に検索され合致した情報のみが閲覧可能となり、検索を行った参加者は登録したプロフィールすべてを直接みることはできないため、参加者にとって非常にセキアーなシステムであると言えます。

(用語解説)
ピアツーピア(Peer to Peer):
peerは「同僚、同等の者」を指す英語。peer to peerは端末間あるいはユーザ間で文字通り対等な通信を行う技術。サーバが主、クライアントが従となるサーバ・クライアント方式と対比して用いられる。P2Pはpeer to peerの省略形であるが、端末より個人に重点を置いた表現としてperson to personを指すこともある(意味はpeer to peerと同じ)。


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